副詞の分類

 はじめに

 本稿は、日本語の副詞を意味に基づいて分類したものである。筆者は昨年川瀬卓先生から副詞の歴史的な変遷について教わり、副詞というものに興味を持った。そして副詞について調べるうちに、それぞれの副詞の意味を把握する必要があると考えた。そのため本稿を書いた次第である。


 先行研究

 この章では、副詞の分類を行った研究を3つ紹介する。

 1つ目は益岡・田窪(1992)である。この本は日本語の文法全般について述べたものだが、語の性質についての記述の中に副詞に関するものが存在する。この本は副詞をまず述語の修飾語になるものと文の修飾語になるものに分類したうえで、さらに、述語の修飾語になる副詞を様態の副詞、程度の副詞、量の副詞、テンス・アスペクトの副詞に、文の修飾語になる副詞を陳述の副詞、評価の副詞、発言の副詞に分け、また、上記の分類に当てはまらない副詞として「特に・やはり・せっかく」などを挙げている。

 2つ目は仁田(2002)である。この本は、事態の成り立ち方を修飾する語句を「副詞的修飾成分」と名づけ、その統語・意味的な特徴を記述したものである。おおむね本稿で言うところの様態・程度・時間の副詞を扱っており、文修飾の副詞は扱っていない。この本は、副詞的修飾成分を結果の副詞、様態の副詞、程度量の副詞、時間関係の副詞、頻度の副詞に分けている。

 3つ目は石黒(2023)である。この本は、副詞の文法・意味的な特徴とコミュニケーションにおける効果について述べたものである。この本は、副詞をまず属性副詞と陳述副詞に分類したうえで、さらに、属性副詞を情態副詞と程度副詞――時間の副詞を含む――に、陳述副詞を予告副詞――おおむね本稿におけるD1〜D10にあたる――と検討副詞――おおむね本稿におけるD11〜D13にあたる――に分けている。

 また、分類はおこなっていないものの、副詞の意味を詳細に分析した研究として上記のものの他に飛田・浅田(2023)が挙げられる。


 概観

 本稿では、副詞を様態の副詞・程度の副詞・時間の副詞・文修飾の副詞に分ける。様態の副詞とは動作や変化の様態を表すものであり、程度の副詞とは様態の程度を表すものであり、時間の副詞とはテンスやアスペクトを表すものであり、文修飾の副詞とはモダリティやとりたてを表すものである。

 なお、本稿において「・」は語の区切りを、「/」は分類の区切りを表す。

 副詞の中にはもっぱら否定文で使われるものがあるが、このような副詞は数が多く、意味も多様であるため、本稿では1つにまとめることはしなかった。このような否定文で使われる副詞には、B-4のうち「あまり」以降のもの、C-4の「なかなか」、C-5の「まだ」、C-6の「そうそう・めったに」、C-7の「いまだかつて・ついぞ」、D-1、D-3、および、D-4の「まさか」などがある。

 文修飾の副詞の中に「D-10 評価の副詞」というものがある。評価という概念は曖昧なものであり、何をもって評価と見なすかは明確ではないが、評価を表す副詞としてはD-10の他にも、A-2、B-3のうち「わりと」以前のもの、B-4のうち「あまり」以降のもの、C-4のうち「いよいよ」以降のもの、および、D-11などが挙げられる。


 A 様態

 様態の副詞は動詞の前で使われ、意図性の有無を表すもの、努力を表すもの、動作を完遂できるかどうかを表すもの、および、軽率さを表すものなどがある。なお、様態の副詞の中には擬音語や擬態語が多くあるが、本稿では扱わない。

 A-1 意図

 以下の副詞は、意図性の有無を表す。動作に意図性があることを表すもの、意図性がないことを表すもの、および、動作を無理に行うことを表すものに分けられる。

あえて・わざと・わざわざ/うっかり・おのずと・思わず・自然と・つい・ふと/あくまでも・どうしても・無理やり

 A-2 努力

 以下の副詞は、努力して動作を行うことを表す。

一生懸命・懸命に・精一杯・できるだけ・なるべく・熱心に・ひたすら

 A-3 完遂

 以下の副詞は動作を成し遂げられるかどうかを表し、動作が行われたことを表すもの、および、動作がもう少しで行われそうだったことを表すものに分けられる。

辛くも・辛うじて・すんでのところで・何とか/危うく・あわや

 A-4 軽率

 以下の副詞は、深く考えずに動作を行うことを表す。

みだりに・むやみに・やたらと


 B 程度

 程度の副詞は、動詞、形容詞や形容動詞の前で使われる。もっぱら様態の程度を表すもの、もっぱら物の量を表すもの、および、程度と量の両方を表すものに分けられる。程度と量の両方を表す副詞には、程度の高さや量の多さを表すもの、および、程度の低さや量の少なさを表すものがある。また、比較の構文で使われるものもある。

 B-1 程度が高い

 以下の副詞は程度の高さを表し、純粋に程度の高さを表すもの、および、程度の高さと奇妙さを同時に表すものに分けられる。

大いに・極めて・すごく・大変・とても・はなはだ・非常に・めちゃくちゃ/妙に・やけに・やたら

 B-2 量が多い

 以下の副詞は量の多さを表し、純粋に多さを表すもの、および、量が100%であることを表すものに分けられる。

いっぱい・うんと・多く・大勢・たくさん・山ほど/ことごとく・すべて・全部・何もかも・みんな

 B-3 程度が高い・量が多い

 以下の副詞は、程度の高さと量の多さを表す。純粋に程度の高さや多さを表すもの、程度の高さや多さと意外性を同時に表すもの、程度が過剰であることを表すもの、および、程度や量が100%に近いことを表すものに分けられる。

かなり・随分・相当・大分・よほど/結構・なかなか・まあまあ・わりと/あまりにも/あらかた・おおむね・大概・大体・大抵・ほとんど・ほぼ

 B-4 程度が低い・量が少ない

 以下の副詞は、程度の低さと量の少なさを表す。純粋に程度の低さや少なさを表すもの、否定文で使われて程度の低さや少なさと意外性を同時に表すもの、および、否定文で使われて程度や量がゼロであることを表すものに分けられる。

いくぶん・いささか・若干・少々・すこし・多少・ちょっと・やや/あまり・いまいち・さほど・それほど・大して・別に/一向に・一切・すこしも・全然・ちっとも・一つも・まったく・まるで

 B-5 比較

 以下の副詞は、比較を表す文で使われる。程度が他のものよりも高いことを表すもの、程度の差が激しいことを表すもの、および、程度が何よりも高いことを表すものに分けられる。

一層・さらに・もっと・余計に・より/ずっと・はるかに/一番・もっとも


 C 時間

 時間の副詞は動詞の前で使われ、テンスを表すものとアスペクトを表すものに分けられる。アスペクトを表す副詞には、動作が続くかどうかを表すもの、変化に時間がかかることを表すもの、動作が早いかどうかを表すもの、動作が終わったかどうかを表すもの、頻度を表すもの、動作を行ったことがないことを表すもの、および、反復を表すものがある。

 C-1 テンス

 以下の副詞は出来事がいつ行われるかを表し、過去を表すもの、現在を表すものと未来を表すものに分けられる。

以前・いっとき・かつて・この間・このごろ・最近・先ほど・さっき・近ごろ・前に・昔/今/後で・いずれ・おいおい・じきに・そのうち・まもなく・もうすぐ・やがて

 C-2 継続

 以下の副詞は、動作が続くかどうかを表す。動作が続いていることを表すもの、動作がある程度続くことを表すもの、および、動作の続く時間が短いことを表すものに分けられる。

相変わらず・依然として・まだ/しばらく/一旦・今のところ・当面・取りあえず

 C-3 変化

 以下の副詞は変化に時間がかかることを表し、変化に時間がかかることを純粋に表すもの、および、時間が経つにつれて程度が高くなることを表すものに分けられる。

次第に・徐々に・すこしずつ・だんだん/いよいよ・ますます

 C-4 緩急

 以下の副詞は、動作が早いかどうかを表す。動作の遅さを表すもの、動作への取りかかりの早さを純粋に表すもの、取りかかりの早さと意外性を同時に表すもの、取りかかりの遅さを表すもの、および、否定文で使われて取りかかりの遅さを表すものに分けられる。

おもむろに・やおら・ゆっくり/早速・至急・すぐ・早急に・ただちに・たちどころに・たちまち・途端に・とっさに/いきなり・急に・急遽・つと・突然/いよいよ・ついに・とうとう・やっと・ようやく/なかなか

 C-5 完了

 以下の副詞は、動作が終わったかどうかを表す。動作が終わったことを表すもの、否定文で使われて動作が終わっていないことを表すもの、および、準備としての動作を終えたことを表すものに分けられる。

すでに・とっくに・もう・もはや/まだ/あらかじめ・前もって

 C-6 頻度

 以下の副詞は、動作の頻度を表す。頻度が100%であることを表すもの、頻度の高さを表すもの、頻度の低さを表すもの、および、否定文で使われて頻度の低さを表すものに分けられる。

かならず・ずっと・つねに・普段/しばしば・しょっちゅう・よく/たまに・時々/そうそう・めったに

 C-7 未経験

 以下の副詞は動作を行ったことがないことを表し、動作が一度目であることを表すもの、および、否定文で使われて動作を行ったことがないことを表すものに分けられる。

初めて/いまだかつて・ついぞ

 C-8 反復

 以下の副詞は動作が繰り返されることを表し、動作が繰り返されることを純粋に表すもの、および、動作が繰り返されることと頻度の高さを同時に表すものに分けられる。

ふたたび・また・もう一度/しきりに・立て続けに・何度も


 D 文修飾

 文修飾の副詞は、述語の前で使われる。否定を予告するもの、モダリティを表すもの、評価を表すもの、予測を表すもの、自分の発言に対する注釈を表すもの、および、とりたてを表すものに分けられる。モダリティを表す副詞には、依頼や願望を表すもの、不可能を表すもの、推量を表すもの、推定を表すもの、可能性を表すもの、疑問を表すもの、感嘆を表すもの、および、仮定の表現を予告するものがある。

 D-1 否定

 以下の副詞は否定文で使われ、完全な否定を表すものと部分否定を表すものに分けられる。

決して・絶対・断じて/あながち・一概に・かならずしも

 D-2 依頼・願望

 以下の副詞は、「てください」のような依頼の表現や「たい・てほしい」のような願望の表現の前で使われる。もっぱら依頼の文で使われるもの、もっぱら願望の文で使われるもの、および、依頼の文と願望の文の両方で使われるものに分けられる。

どうか・どうぞ・何とぞ/あわよくば・どうにかして・願わくば/ぜひ

 D-3 不可能

 以下の副詞は、可能動詞の否定形の前で使われる。

到底・とても

 D-4 推量

 以下の副詞は、推量や可能性の表現の前で使われる。モダリティの表現を伴わずに確信を表すもの、「だろう・と思う」のような推量の表現の前で使われるもの、および、推量の表現の否定形の前で使われるものに分けられる。

かならず・きっと・絶対/大方・恐らく・さぞかし・多分/まさか

 D-5 推定

 以下の副詞は、比況や推定の表現の前で使われる。「よう・みたい」のような比況の表現の前で使われるもの、「らしい・終止形+そう」のような推定の表現の前で使われるもの、および、「連用形+そう」のような表現の前で使われるものに分けられる。

あたかも・さながら・さも・まるで/どうも・どうやら・何でも/一見

 D-6 可能性

 以下の副詞は可能性の表現の前で使われ、「がち・かねない」のような傾向の表現の前で使われるもの、および、「かもしれない」のような可能性の表現の前で使われるものに分けられる。

往々にして・とかく・ややもすれば/ひょっとしたら・もしかしたら

 D-7 疑問

 以下の副詞は、疑問文で使われる。

一体・果たして

 D-8 感嘆

 以下の副詞は、感嘆文で使われる。

何と

 D-9 仮定

 以下の副詞は仮定の表現の前で使われ、「ば・たら・なら」のような順接の仮定の表現と「ても」のような逆接の仮定の表現の前で使われるもの、および、もっぱら逆接の仮定の表現の前で使われるものに分けられる。

仮に・万が一・もし/いくら・たとえ・どれほど

 D-10 評価

 以下の副詞は、出来事に対する評価を表す。出来事が好ましいことを表すもの、好ましくないことを表すもの、従属節で使われて好ましくないことを表すものに分けられる。

幸い・さすが/あいにく・残念ながら・しょせん・たかが/どうせ・どっちみち

 D-11 予測

 以下の副詞は、出来事が予想通りかどうかを表す。出来事が予想通りであることを表すもの、予想と異なることを表すもの、出来事が当たり前であることを表すもの、出来事が必然的ではないことを表すものに分けられる。

案の定・果たして・やはり/案外・意外と/当然・もちろん/偶然・たまたま

 D-12 発言

 以下の副詞は、自分の発言に対する注釈を表す。発言の内容が真実であることを表すもの、発言の内容の詳細が不明であることを表すもの、発言の内容が前提であることを表すもの、および、聞き手に対する配慮を表すものに分けられる。

実際・実は・本当に/どうも・なぜか・何か・何となく・無性に/そもそも・だいいち・大体/正直

 D-13 とりたて

 以下の副詞は、とりたてを表す。「だけ」のような限定の表現の前で使われるもの、あるものが際立っていることを表すもの、および、あるものが典型的であることを表すものに分けられる。

ただ・単に・もっぱら/ことさら・ことに・特に・特別・とびきり・とりわけ・中でも/主に・主として


 おわりに

 本稿では、副詞を意味に基づいて様態の副詞・程度の副詞・時間の副詞・文修飾の副詞に分けた。しかし、「一応・結局・たとえば・とにかく・何しろ・まして・まさに・むしろ・ろくに」など、上記の分類に上手く当てはまらないものもあった。これらの副詞の意味については、改めて考えることとしたい。


 参考文献

石黒圭(2023)『コミュ力は「副詞」で決まる』、光文社
仁田義雄(2002)『新日本語文法選書3 副詞的表現の諸相』、くろしお出版
飛田良文・浅田秀子(2023)『現代副詞用法辞典 新装版』三版、東京堂出版
益岡隆志・田窪行則(1992)『基礎日本語文法 ―改訂版―』、くろしお出版

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